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今後の住宅控除 見通し

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2022年度税制改正大綱


家計にかかる税負担が、来年からじわりと増えそうです。今般、与党がまとめた2022年度税制改正大綱によると、住宅ローン控除の控除率や住宅取得資金贈与の非課税枠が縮小するほか、コロナ禍で導入していた固定資産税の負担軽減措置が住宅地で取りやめになります。株式の配当でも、所得税と住民税で課税方式を使い分けることによる節税が24年度からできなくなる様です。住宅購入や株式投資など、個人の資産形成に身近な分野で税軽減や非課税の恩恵を受けにくくなる改正が目立ち、何らかの影響を受ける人は少なくないだろうと思われます。




住宅ローン控除


現在は年末ローン残高の通常1%の金額を所得税と住民税から原則10年、特例で13年差し引くことが出来ます。この控除率が22年以降に借りてローン控除を受ける人から0.7%になります。ローン金利は歴史的な低水準にあり、1%未満でローンを組んで控除を利用すれば、控除額が利払い額を上回る場合があります。控除率の引き下げはこうした「逆ざや」に対応するのが目的です。
0.7%を下回る水準で借りることが出来れば逆ざやは解消しないとみられますが、従来に比べ利幅は縮小します。所得要件を現在の「年3000万円以下」から「年2000万円以下」に下げることも踏まえると、今までは高所得者ほど逆ざやを狙って積極的に借りていたものが利用しにくくなるとも考えられます。

ローン残高の上限見直し


富裕層だけでなく幅広い層に影響しそうなのが、控除対象になるローン残高の上限の見直しです。控除の適用期限を25年の入居まで4年延長し、控除期間を新築住宅で原則10年から13年に延ばします。そのうえでローン残高の上限は住宅の環境性能で4つに分け、新築は段階的に引き下げます。
例えば省エネや耐震性に配慮した「認定住宅」の場合、22年~23年入居は現在と同じ5000万円で、24年~25年は4500万円になります。控除率と残高の上限が下がることで、期間中に得られる控除額も少なくなります。認定住宅なら現在の最大600万円が22~23年入居は455万円、24~25年入居は410万円に減少。環境に配慮した「省エネ基準適合住宅」でも24~25年入居にかけてローン残高の上限と最大控除額は減ります。23年までの住宅購入を促す狙いもあるのかもしれません。


住宅取得資金贈与の非課税制度の縮小


父母、祖父母から子、孫への住宅取得のための資金贈与が一定額まで無税になる制度は住宅ローン控除と同様に昨年末が期限となっていました。この期限を23年12月末まで2年延長し、非課税枠は現在の最大1500万円から500万円少ない1000万円になります。
父母や祖父母などが非課税贈与によって相続財産を減らせば相続節税につながるため住宅資金贈与を利用する富裕層は少なくないでしょう。

固定資産税の負担増?!


住宅の保有で毎年かかる固定資産税の負担も増えそうです。21年度は20年度までの地価の上昇傾向を受けて税額が増える見込みでしたが、コロナ禍の影響に配慮して20年度と同水準に据え置いていました。
今回の改正で住宅地は据え置きをやめ、時下上昇を税額に反映することになります。商業地は1年間限定で税額を2.5%増以内に抑える措置をとります。

配当課税の仕組み


配当課税の仕組みが変わることも知っておきましょう。
配当は所得税と住民税を納め、現在はそれぞれ異なる課税方式を選ぶことで節税できるケースがあります。24年度からは所得税で選ぶ方式を住民税にも適用し、使い分けできなくなるため税負担が増す人が出てくるでしょう。
配当の課税方法は3つあります。まず、「申告不要制度」で、配当を受け取る際に所得税15%(復興特別所得税を除く)と住民税5%の計20%が源泉徴収されます。確定申告はしないで課税が終わります。「源泉徴収ありの特別口座」を利用する人に多いです。残りの2つは確定申告をする場合で、配当を給与など他の所得と合計する「総合課税」と、給与などと分けて手続きする「申告分離課税」です。
 現在節税ができるのは、配当を含めた課税所得が900万円以下の人です。確定申告で所得税は総合課税を選び、住民税は申告不要の届け出をします。総合課税には「配当控除」という仕組みがあり、一定割合を軽減します。住民税は申告不要によって源泉所得税率である5%ですみます。このため所得税と住民税をあわせた実質税率は源泉徴収税率の20%より軽くなります。
 しかし24年度からは使い分けが廃止され、所得税住民税とも総合課税になると、実質税率は上昇します。株式の売却益や、株式投資信託の分配金、売却益も使い分けができなくなります。
 こうした使い分けは配当収入のある高齢者の間で広がっていました。住民税を申告不要にすれば、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料を算出する際に基準になる所得割が配当の分だけ減り、保険料も減少するためです。この使い分けの廃止はいわば静かなる増税で、中低所得者の負担増につながる。との見方もあります。

暦年贈与、課税強化持ち越し


今回の税制改正大綱に暦年贈与を使った相続税の節税対策封じはありませんでした。暦年贈与とは高齢者などの被相続人が生前に子や孫といった相続人に自分の財産を毎年贈与する事です。贈与によって相続財産を減らせば、相続税を少なくすることができます。
 生前贈与は財産をもらった人に贈与税がかかりますが、年110万円の基礎控除の範囲であれば無税ですむため利用する人は多いです。年110万円を超えても、暦年贈与を長く続けると相続財産がその分大きく減り、相続税と贈与税の合計額が暦年贈与をしない場合の相続税額より少なくて済むケースがあります。このため一定の贈与税をあえて負担し暦年贈与をする富裕層も目立つといいます。
政府はこうした節税策は格差の固定などにつながるとして問題視してきました。22年度大綱で具体策は盛り込まれませんでしたが、今後の課題として「本格的な検討を進める」と明記しています。
現在は被相続人が贈与してから3年以内に亡くなると、相続人が3年間に受け取った財産は相続財産に加算して相続税を計算しています。今後この期間を「5年以内」や「10年以内」といった具合に強化するとの見方もでています。23年度の税制改正で議論する可能性は大きいと考えられます。





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