毎年12月になると、ふるさと納税に関する話題を目にすることが増えます。ふるさと納税は1~12月までの金額に応じて控除される税額が決まるためです。上手に使えば自己負担2000円で、それを大きく上回る地域の特産品などの返礼品を受け取れます。せっかく利用するならメリットを最大限にいかしましょう!
神奈川県内に住む会社員は「昨年末は知識が乏しく十分にメリットを得られなかった。今年は最大限に活用したい」と、自治体や返礼品を検索できるふるさと納税サイトでの情報収集に余念がない。
ふるさと納税は正確には都道府県や市区町村など地方自治体への寄付です。年収や家族構成などの条件で決まる「上限額」までなら、寄付金控除により、その年の所得税や翌年の住民税が減り、実質的な自己負担額は2000円になります。寄付先の自治体からは寄付額の最大30%相当の返礼品をもらえるので、1年間に2000円を超える価値の返礼品を受け取れば家計にはプラスになります。
お得感を大きくするには、まず自分が出来るふるさと納税の納税の上限額を把握しなければなりません。総務省は給与収入を得ている人について、上限額の目安を示しています。ふるさと納税をする人の給与収入が300万円で独身か共稼ぎ(配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けていない)の場合は2万8000円です。同じ給与収入でも配偶者に収入がない夫婦の場合は1万9000円、夫婦に高校の子供が1人いる場合は1万1000円に減ります。同じ条件で収入が多くなると上限額は増えます。
ただし、この数字は「あくまで目安」です。住宅ローン控除や医療費控除などほかの控除があると金額が変わるほか、年金収入のみや個人事業主でも上限が異なります。ふるさと納税サイトなどが用意する試算機能を使うなどして、より正確性の高い上限額を把握しましょう。医療費控除など細かな条件を反映させるサイトもあります。
丁寧に試算した場合も年間の上限額に対し寄付総額は余裕を持たせたほうが無難です。年末まで収入や医療費などは変わる可能性があるうえ、上限を超えるとその金額に応じて自己負担額が増え、お得感が大きく損なわれやすいためです。
ふるさと納税サイトも最大限活用したい。サイトにより対応する自治体や扱う返戻品は異なります。自分に合うものを活用すれば、お得感は高まります。楽天ふるさと納税やau PAYふるさと納税など、すでに持っている共通ポイントを寄付に充てることができるサイトもあります。
年末は駆け込み需要を狙い、スマートフォン決済を使うとポイント還元が厚くなるキャンペーンが目立ちます。例えばふるなびでは2023年1月末まで、キャンペーンに登録しPayPayや楽天ペイなどのスマホ決済を使って寄付をすると、最大20%分の「ふるなびコイン」を付与されます。
寄付の上限まで余裕があり、返戻品選びに迷ったら、自治体のポイントや商品券に変えるのも一案です。自治体によっては寄付金額に応じたポイントを付与し、1年や2年といった期間内に特産品などに交換できるものもあり、肉やカニの返戻品が一斉に届いて冷蔵庫が満杯になるような事態を避けられます。
寄付した自治体の観光施設で使える商品券も人気で、発行から半年といった期間で好きな時に使えます。
さとふるでは11月から寄付先の自治体が指定する店舗や施設でPayPayアプリでの支払いに使える商品券を返戻品として提供し始めました。寄付をしてからすぐに利用できるのが魅力です。
ふるさと納税で税の控除を受けるには、年内に寄付したうえで、期限までに手続きをしなければなりません。手続きの仕方は2通りあります。
1つは、翌年3月15日までに確定申告をする方法。通常の確定申告は2月16日から始まりますが、確定申告の必要のない給与所得者の還付申告は1月から出来ます。
もう1つはワンストップ特例制度というものです。確定申告の必要がない給与所得者で、寄付した自治体が5つまでなら、寄付先の自治体に申請書を提出すれば、確定申告なしで翌年度の住民税から控除されます。
確定申告をすると税の控除は所得税と住民税からですが、ワンストップ特例では住民税から控除されます。上限額までの控除では自己負担はいづれの場合も2000円。ただし上限額を超えて寄付した場合、ワンストップ特例は確定申告をするよりも不利になります。
ワンストップ特例制度を利用する場合、従来は紙の申請書を翌年1月10日必着での送付する必要でした。しかし、一部の自治体では22年分からマイナンバーカードとカードの読み取りに対応したスマホを持っていればオンラインで申請ができるようになりました。
住宅ローン控除や医療費控除のため、確定申告が必要になった場合は注意が必要です。ワンストップ特例の申請をした後に確定申告をすると、特例の適用が受けられなくなり、確定申告時に改めてふるさと納税について寄付金控除を申請する必要があります。
ふるさと納税で返戻品がもらえるのは、居住地以外の自治体に寄付したときだけです。居住地の自治体に寄付すると税額控除はされますが、返礼品は受け取れないため自己負担額2000円を損するだけになります。ただし、その場合も、寄付金の使い道を自分で指定出来ることが多いです。この仕組みを使って「地元にも寄付してもらおう」と知恵を絞る自治体も増えています。
地元への寄付を募るのは、住民が他の自治体にふるさと納税すれば、その分、居住する自治体の税収が減ってしまうからです。東京都世田谷区では22年度のふるさと納税による区民税の減収額が87億円に達する見通しになっています。世田谷区が使途を指定できる寄付メニューの1つとして用意しているのが「下北沢駅前広場プロジェクト」。街路樹やベンチなどの整備に充て、舗装に使うブロックには区民でも寄付者の名前を入れて顕彰するといいます。川崎市の「学校ふるさと応援寄付金」は市立学校の中から寄付者が指定した学校に寄付ができるというもので、いずれも税額控除が可能になります。返礼品がなくても、住んでいる自治体のメニューにこれなら寄付したい!と思えるものがあるか探してみるのもよいでしょう。